平成14年(2002年)、当センターの誕生に先立ち、芸術監督に就任しました。
当センターは、令和2年(2020年)に設立15周年を迎え、令和4年12月には公演入場者800万人を達成し、舞台芸術の中核的劇場として親しまれています。メトロポリタン歌劇場、ベルリン・フィルなど世界一流の公演はもちろん、「世界音楽図鑑」「古楽の愉しみ」といった特色あるシリーズ、「プロムナード・コンサート」「ワンコイン・コンサート」などの低料金かつ良質なプログラムなど、芸術の新しい楽しみ方を提案する企画も好評です。
芸術監督プロデュース公演では、オペラをもっと楽しんでもらいたいという思いから、できるだけオリジナルなものに近いものを、できるだけオーソドックスな演出でお届けしています。おかげさまで多くの方に鑑賞いただいており、同一会場同一演目で8公演以上を上演できているのは国内では当センターだけだと思います。
開館と同時に誕生した「兵庫芸術文化センター管弦楽団」(PACオケ)もユニークな存在です。楽団員は35歳以下、最長3年間しか在籍できないというルールがあり、団員たちは卒団までに他の楽団のオーディションに挑戦して世界へ羽ばたいていきます。プロの楽団であると同時に「アカデミー」の要素も持つ日本唯一の楽団なのです。また、兵庫の体験教育の一貫として中学1年生を対象にした「わくわくオーケストラ教室」も実施していますが、これも劇場と楽団を一体的に運営しているセンターらしさを生かした事業だと思います。令和2年(2020年)からは、「わくわく Online オーケストラ」の動画配信も始めました。
地域とつながりが強いことも大きな特色です。平成7年(1995年)に発生した阪神・淡路大震災では、芸術文化が復興の大きな力になりました。当センターは、この教訓を後世に伝えるシンボルです。私は開館前から地域に積極的に足を運んできました。当時出会った多くの人々が、このセンターのにぎわいを支える応援団になってくださっています。当センターの誕生と阪神・淡路大震災は切り離すことができません。そのため、大きな災害が発生するたびに私の思いは被災地に向かいます。東日本大震災や熊本地震をはじめ、国内外で大きな災害に見舞われた被災地への義援金やチャリティー活動に力を入れていきたいと思っています。芸術は人々の心のビタミンです。この経験をセンターとお客様が共有できるからこそ、訪れる方々に生きる勇気や元気を提供し続けることができるのではないかと思っています。
これからも多彩な演目を通じて、お客様にサプライズ感やわくわく感を味わっていただきたい。「劇場はみんなの広場」を合言葉に、にぎわいを創り出していきたいと考えています。
佐渡監督が、兵庫県のすごい人を「すごいすと」として紹介するネット情報誌(兵庫県発行)に取り上げられました。
京都市立芸術大学卒業。故レナード・バーンスタイン、小澤征爾らに師事。1989年ブザンソン指揮者コンクール優勝、1995年第1回レナード・バーンスタイン・エルサレム国際指揮者コンクール優勝。
これまでパリ管弦楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、ケルンWDR交響楽団、バイエルン国立歌劇場管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、北ドイツ放送交響楽団(現・NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)等、欧州の一流オーケストラに多数客演を重ねている。2015年よりオーストリアを代表し110年以上の歴史を持つトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督に就任し、欧州の拠点をウィーンに置いて活動している。2003年「エクサンプロヴァンス音楽祭」での『椿姫』(演奏:パリ管弦楽団)、2007年「オランジュ音楽祭」でプッチーニ『蝶々夫人』(演奏:スイス・ロマンド管弦楽団)、トリノ王立歌劇場で2010年ブリテン『ピーター・グライムズ』、2012年『カルメン』、2015年『フィガロの結婚』など海外のオペラ公演の実績多数。
国内では、当センター芸術監督のほか、シエナ・ウインド・オーケストラ首席指揮者、サントリー「1万人の第九」総監督を務める。2015年9月まで「題名のない音楽会」(テレビ朝日系列)の司会者を7年半務めた。2022年4月より新日本フィルハーモニー交響楽団ミュージック・アドヴァイザーを務めており、2023年4月には同楽団音楽監督に就任。
CDリリースは多数あり、最新盤はトーンキュンストラー管弦楽団、ケイト・リンジー、ウィーン楽友協会合唱団、ウィーン少年合唱団を指揮した「マーラー:交響曲第3番」を2023年4月にリリース。著書に「僕はいかにして指揮者になったのか」(新潮文庫)、「棒を振る人生~指揮者は時間を彫刻する~」(PHP文庫/新書)などがある。